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GenSenNews ~KoKoRo

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ジョブズが憧れた日本人

思考
 パソコンやiPhoneにiPad、iPod…。誰もが世界のネットワークにアクセスできる時代が到来したその陰には、アップル創業者の一人、スティーブ・ジョブズ(1955~2011年)の計り知れない功績がある。彼の半生を描いた映画「スティーブ・ジョブズ」(ダニー・ボイル監督)が公開中だ。
 日本で知らない者がいない“伝説の男”。尊敬する歴史上の人物のアンケートをとると常に上位にランクされるが、彼が若い頃に憧れ、海を渡って会いに来た日本人がいたことを、どれほどの人が知っているだろうか? 
元シャープ副社長の佐々木正さん
 “電卓生みの親”と呼ばれ、シャープを世界的企業に育てた元副社長の佐々木正さん。間もなく101歳となるが、いまだ発明家として研究の日々を送る佐々木さんがジョブズとの出会いを振り返った。
 「髪の毛が伸び放題で、Tシャツにジーンズ姿。まるでヒッピーのようでしたね」
 佐々木さんは、アポイントもなしに、突然、自分に会いに来たという米国人の若者を見たときの第一印象を笑いながらこう振り返った。当時、佐々木さんはシャープの東京支社長。どう見てもビジネスマンらしからぬ怪しいその姿に、「礼儀知らずの格好だな」と驚いたというが、佐々木さんは応接室へ若者を招き入れ、真剣に話を聞いた。
 「アイデアを求めて私は太平洋を越え、日本にいるあなたに会いに来たんです」。若者は佐々木さんの目を見つめながら、こう熱く語り始めたという。
 若者の名前はスティーブ・ジョブズ。彼はアップルの創業者の一人だが、創業から数年後、新製品のマッキントッシュの販売不振の責任を取らされ、自分の会社を追放されていた。佐々木さんにアイデアを求めて会いに来たのは、ちょうどその頃だった。
 「彼の瞳はきらきらと輝き、物事の本質を見極めようとするかのように、じっと見つめる強い“目力”が今でも強く印象に残っています」と佐々木さんは語る。
 パソコンだけでなく、すでに新たな携帯デバイスに興味を持っていたジョブズに、佐々木さんはこんなアドバイスをしている。
 「ソニーウォークマンは携帯型の音楽プレーヤーとしてはまだまだ大きい。もっと小さいものでなければいけない」と。この佐々木さんのアドバイスと、映画で描かれるあるシーンとが重なった。
 劇中、ジョブズの娘がウォークマンを首からぶらさげ、ヘッドフォーンで音楽を聴いているとき。彼は娘にこう言う。「そんな大きく重い物をよく持ち歩いているな。将来、もっと小さくなるよ」
 ジョブズは佐々木さんのアドバイスを忘れていなかった。その後、ポケットに隠れてしまうほど小さな携帯型の音楽プレーヤー「iPod」を彼は開発、世界中に広めてしまうのだ。佐々木さんはこう強調した。
 「私が若い人を見る基準は服装などの見かけではありませんよ。目です。目力があるかないか。それが一つのポイントですね」(戸津井康之、産経ニュース2016.02.29