「職場配属された新入社員が、朝なるはやで、出社したほうがいいよ」と言われる5つの理由!?
春です。
会社の中には、そろそろ新人研修を終え、新人を職場配属しているところも増えてきているのではないでしょうか。
会社によっては、職場配属された新人には、「なるべく朝早く出社したほうがいいよ」というメッセージを発しているところもあるようですね。今日は、このメッセージの裏に隠された意味を考えてみましょう。そこには、それなりに「合理的な意味」があると僕は思っています。
ちなみに冒頭で誤解を避けるために申し上げますが、会社・組織の中には、単純に、「新人」を「しごく」「いびる」ためだけに「なる早の出社を迫っている」ところもあるから注意が必要です。全く合理的根拠がないような、単なる慣習、反知性的ないびりで、そうしたことが強制されるケースです。冒頭申し上げておきますが、わたしは、そういう意図には一切与しません。今日の記述は、そうした場合を除くものとすることを、前段でお断りしておきます。
結局、朝早めに出社するかどうかは、新人本人の選択の問題です。こうしたことが過剰に強制されることには、僕は与しません。それが労働基準を超えて強制されていれば、単なる無給労働、法律違反です。下記の記述は、そうしたことをご理解・ご留意のうえ、お読み頂ければ幸いです。
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それでは、なぜ、職場配属されたばかりの新人には、なるべく朝、はやく出社をしたほうがいいよ、と告げることが多いのか。その意味を考えましょう。
ひとつの理由には「OJTのための時間の融通」があります。
新人に貼り付けられることの多いOJT指導員は、通常、自分の仕事をしながら新人の面倒も見ています。彼/彼女には、ただでさえ時間がないのだから、新人の指導は、なるべく朝にやっておきたいし、日々のコミュニケーションも、ここでとっておきたいと考えるのが常です。
新人も、朝すこしでも余裕があれば、昨日積み残した仕事を追うことや復習ができるし、今日、これから行う仕事の予習もできるかもしれません。
また、OJT指導のノートや日誌などを課している会社の新人は、OJT指導にかかわる様々な付帯業務も、この時間にこなすことができます。会社は「教えてもらう場所」ではなく「仕事をする場所」です。ですので、時間をいかに効率的に使うかが、人々の主要な関心になります。
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ふたつめに「社会的接点を増やすことができる」という点です。
朝少しでも早く新人が職場にいれば、当然出社してくる他の社員と挨拶をしたり、声をかけられる可能性が高くなります。給湯室などにいってみれば、コーヒーやお茶を飲みに来た他の社員とも雑談などにもなるかもしれません。
要するに、朝の時間を使って、職場の既存メンバーとの社会的接点を多数持つことができるということです。この結果、組織社会化(組織に慣れていくこと)のスピードは、そうでない場合と比べて、早くなる可能性があります。
いざ始業時間になってしまえば、「切った張ったの世界」がはじまるので、多くの人々は、新人のことだけにかまっていられなくなるだろうから。コミュニケーションをしようと思えば、「切った張ったの世界」の外でするしかありません。
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みっつめに「仕事を支える生活習慣獲得」。
OJT指導員にとって、新人に教えなければならないことは「仕事の内容」だけではありませえん。
「仕事を支える生活習慣」を身につけさせることも大切なことです。こうしたことも、「教えなければならないこと」です。
まず朝早く起きて、しっかりと体調を整え、職場の自席につくこと。
あたりまえですが、これは、ぜひとも早期に獲得しなければならない習慣です。
なので、「たかが早起き、されど早起き」なのです。
多くのパフォーマンス低下は、まず労務の機能不全から起こりがちです。
結果、組織適応は早くなると想像できます。
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よっつめに「熱意やモティベーションのディスプレイによって良質の仕事経験を呼び込むため」。
「誰にも頼まれていないのに、朝早く出社する光景」は、仕事への熱意やモティベーションを、新人が有していることを、他者に対してディスプレイ(提示)することにつながります。
本当に、個人の内部に熱意やモティベーションがあるかどうかは、内部を観察できない以上、第三者が把握することはできません。第三者から観察可能なのは客観的な行動だけです。
社会では、上長からみて「熱意やモティベーションのあると感じられる人」に、「よい仕事」が割り当てられます。仕事経験は「平等」に割り当てられるわけではありません。良質な仕事経験を割り当てられるのは、「熱意やモティベーションのあると感じられる人」です。
そして、かの人は、良質な業務経験をこなし、振り返り、それを血肉化していくことで業務能力が伸びていきます。
かくして、良質な業務経験は、「後続するさらに良質の業務経験」を呼び込むことにつながるのです。
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最後、いつつめに「OJT指導員の感情を浄化しつつ、OJT指導の効果を伝える政治的メッセージを発することになる」という点です。
これは少々、込み入った背景があります。
「誰にも頼まれていないのに、朝早く新人が出社する光景」は、OJT指導員のみならず、多くの組織メンバー、特にOJT指導員の「上司」に当たる人も目にします。
そういう意味では、新人の朝早く出社する光景は、「OJT指導員による新人指導が、効果をあげていること」を上司を含む組織メンバーに政治的かつ社会的に新人自らが「証明」する行為でもあります。
OJT指導が奏功しているか、効果をあげているかは、OJT指導員以外の人は、なかなかうかがい知ることはできないものです。上司を含むOJT指導員の以外の人々は、新人の外的に観察可能な行為を通してしか、OJT指導の効果性を実感できません。
まずは、そうした光景を目にしたOJT指導員は、自らの感情をまずは浄化することができるでしょう。
新人の目から見てアタリマエだと思えるOJT指導は、実は、多くはOJT指導員、先輩社員の善意で成立していることが多いものです。しかし、OJT指導員も多くの数字や仕事をもって、この仕事をおこなっています。彼 / 彼女も悩みながら、OJT指導をしているのが現状ではないかと思います。
また、こうした光景は、OJT指導員のみならず、OJT指導員の上長も見ているのです。かくして、「OJT指導員の社会的レピュテーションは、向上すること」が想像できます。そのレピュテーションの向上は、まわりまわって、OJT指導員の新人指導の熱心さにつながるでしょう。
職場というものは、そうした政治が蠢く世界なのです。
ふふふ、社会にようこそ!
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今日は、職場配属された新人が「なるべく朝早く出社したほうがいいよ」というメッセージを伝えられるのはなぜかを考えてみました。
もちろん、冒頭申し上げましたように、会社・組織といっても、いろんな会社があるので、単純に新人を「しごく」「いびる」ためだけに「早朝出社」を迫っているところもあるから注意が必要です。
また、こういうのは、第三者や組織から強制されるものでは、ないと思います。そうだとすれば、単なる長時間労働にしかならないから。無給時間外労働は避けるべきでしょう。
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もう4月も半月が終わりました。
4月に入社してきた新人は、早いものでもう2週間を会社で過ごしていると思います。その疲労も、そろそろ蓄積されている頃でしょうか。まことにお疲れ様です。
ところで、あなたの会社で、今日、職場に一番早く来たのは、誰でしたでしょうか?
新人?
えっ違う? じゃあ、OJT指導員?
いやいや、案外、朝イチで出社しているのは「課長」だったりしてね・・・。
そして人生は続く
(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」の2013年7月30日の記事に、加筆・修正を行ったものです)