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学歴フィルターを自分にかける草食就活生の哀しい習性

 

学歴フィルターをかけているのは、企業だけではないようです

 皆さんは自分自身の「学歴」が気になりますか?

 「学歴フィルター」という言葉があります。企業が採用活動の際に、難関大学を筆頭に限られた大学生を優先的に採用したり、あるいは逆にある基準以下の大学の学生を全て不採用にしたりすることを指す言葉です。

 企業によりけりですが、確かに面接の場で応募者リストを拝見する際、所属する大学名が異常に偏っていると感じるケースは散見されます。しかし、学歴にこだわっているのは企業だけでしょうか。今回は、自ら学歴フィルターをかけてしまっている最近の学生の行動について紹介したいと思います。

高学歴の学生を求める企業の心理は
婚活中の女性に近い?

 仮に企業内で明確な学閥が存在した場合、その大学出身の方は有利な状況になります。また実際に私自身が過去、既卒学生の就職支援をした際にも、国立大学出身者や難関大学卒業者は、企業側から早急にオファーが来てすぐ内定した例が複数ありました。学歴の力は確かに存在しているというのが私の所感です。企業では難関大学を卒業している事実が一定の評価となっているわけです。

 計画的に勉強をしてきて入試試験をパスしたり、推薦を取得したという意味では、確かに学歴は企業の採用選考で参考にする一つの要素となりえるのかもしれません。またそういった高学歴の社員が多くいる組織であれば、高学歴の新入社員を欲する気持ちが強くなる可能性があります。

 さらに、学歴という点で見てみると、就活以外でも面白いデータが存在します。実は高学歴を求めるのは何も企業だけではないのです。

難関大学卒の女性の71%が自分と同等レベル以上の学歴のお相手を希望――」

 これは東進ゼミナールと株式会社IBJの共同意識調査によるもので、IBJの婚活サービスを利用中の未婚男女が対象です。

難関大学出身の女性がパートナーに対しても同等レベル以上の学歴を求めるのは、企業が高学歴の学生を求めている理由と根本的には大差がないのではないか、と私は考えています。企業も女性も、「高学歴=優秀であり将来の活躍や安定につながる」と考えて、その相手を探しています。就活だけではなく、婚活という場面でも学歴フィルターがあるのかと思うと、改めて高学歴の持つ力を考えさせられます。そもそも影響力がなければ、学歴詐称をする必要もありませんから。

 とはいえ、本連載の第45回『「高学歴」「複数内定あります」ベテラン面接官でも騙されやすい学生の特徴』第53回『内定多数の就活エリートがトンデモ社員化する典型例』でもご紹介したように、高学歴や就活エリートがそのまま社会で大活躍しているわけではありません。結婚生活でも高学歴のお相手だから幸せになれるとは言い切れないはずです。

75%の学生「学歴が気になる」
“無難な企業”しか目指さない若者たち

 さらに、ここでもう一つ、学歴フィルターをかけてしまっている人たちの例を紹介します。それが、当の学生たちです。

 「自分自身の学歴は気になりますか?」

 記事の冒頭でも登場した上記の質問を、学生に行ったアンケート結果があります。特定非営利活動法人Checkが首都圏の大学生を対象に調査したものです。この結果によると、実に75%の学生は「学歴が気になる」と回答。さらに77%の学生が「学歴は就職活動や将来において大きく影響するものだと思いますか」という回答に「YES」と答えています。

 私自身、実際に学生と話しているとまれに感じることですが、「ウチの大学はたいしたことない」という自己イメージを持っている学生ほど、“無難な応募先”にしかエントリーしない傾向があります。

 ダメ元でも人気企業にエントリーする学生がいる一方で、自分の大学を考えて必要以上に強いブレーキを踏んでしまうわけです。自分が自分に学歴フィルターをかけてしまっている典型例と言っていいでしょう。

 しかもその学歴フィルターの根拠となっているのは、いわゆる「大学就職率ランキング」や偏差値など、外からの情報によってつくられたもので、必ずしもそのデータがそのまま自分自身の就職活動に直結するわけではありません。

 こうした就活生の思い込みによる萎縮は、非常にもったいないことだと感じています。自分の通う大学や高校を嫌うことで生まれるメリットはありません。自分の所属する集団に否定的になると、自分自身を否定していることにもなってしまいます。

 そうして就職活動自体に及び腰となり、自分が行きたい企業というより、“入れそうな企業”に入社してしまう。募集難の企業にしてみれば一見喜ばしいことにも思えますが、やりがいが見出せないままに早期退職をしてしまう雇用のミスマッチにもつながりやすくなります。そもそも入りたい会社であったり、やりたい仕事があるから入社しているというより、分相応だと思って入社しているわけです。これでは本人だけでなく、社会の活性化にもブレーキをかけてしまいます。

高学歴の学生ほど“前向き”
卑下する新入社員は歓迎されない

 一方で、そもそも高学歴の学生であっても全て望み通りの企業に入社できているわけではありません。難関企業となれば、それこそ難関大学に入るよりさらに高いハードルを越えなければなりません。

 しかし、そんな高学歴の学生の面接を見てみると、話し方などの印象や話す内容からは、前向きなイメージを感じることが少なくありません。就職活動全般においても同様で周囲の協力も仰ぎながら進めています。これも先ほどの自己イメージが無関係ではないと考えています。すなわち「ウチの大学は名門だ」という自己イメージが仮にあった場合には、それが自信の一つの要素となりえるからです。

 

 だから難関大学に入学すべきと言っているわけではもちろんありません。要は学生が自分自身の所属大学やサークル、学部、果てはこれまでの人生に対してまでも、どういったイメージを持っているかによって、その行動までもが変わってくるとお伝えしたいだけです。

 高学歴の人でも「ウチよりもっとレベルの高い大学は存在するから」という思い込みがあれば、結局自信は生まれません。最近では各大学でも就職率が重要視されています。しかし、実際にキャリアセンターを利用している学生は多くはありませんし、どちらかというと一定のリピーターが繰り返し利用している面もあります。1年生時から就職に関する講義を受けたとしても、肝心の本人の自己イメージが下がっている状態では効果が薄くなってしまいます。

 就職活動をきっかけに人間が丸ごと変わるは不可能に近いですが、その活動を元に新たな視点を手に入れたり、社会に向けて意識をしたりという出来事は大きな成長につながります。

 大学名や所属している組織を受け入れ、願わくば自己イメージが上がり、個人として自信を持って活動ができる社会になるべく行動できる土台を築いていきたいものです。自分を卑下して入社してくる新入社員は、あまり歓迎できるものではありません。前向きな学生にこそ入社して活躍ほしいと切に願います。

 間違いなく20、30年後の日本を創っているのは彼らです。学歴を超えた自分の可能性を信じて突き進んでいただきたいものです。

(キャリアプロデューサー 櫻井樹吏)

参考資料:
特定非営利活動法人Check『学歴・学生生活・就職に関する意識調査』