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「優しさ分けてくれた」中学生の奮闘、被災者に勇気 避難所運営の力に

 約千人が避難生活を送る熊本市中央区の江南中で、被災者支援に中学生たちが奮闘している。ごみの片付け、トイレ掃除、高齢者への声掛け。水が足りないときは運動場に白線で「のみ水ください」と書き、実際に飲料水が届いた。地元の若者の頑張りに被災者も勇気づけられている。

 「元気ですか」。19日午前、体育館で食事をしていた高齢の夫婦に中学生2人が声を掛けた。定期的にごみを拾いながら、被災者の体調を確認するためだ。

 家庭科室で作った炊き出しを出すとき「ご飯ができました」と声を掛けるのは、江南中出身の高校生の役目だ。列を作る人には中学生2人が滅菌用にウエットティッシュを配り「頑張りましょう」と声を掛ける。

 誰に言われたわけでもない。地元の大学生が支援を始めた姿を見て、避難していた江南中の生徒を中心に「自分たちも何かできないか」と自主的に活動が広がったという。自宅で寝泊まりしている生徒たちも加わり、1日に20~30人が避難所で汗を流している。

 夫婦で避難してきた金子信子さん(73)は「避難所生活や地震で緊張が続くけれど、子どもたちの頑張りを見ると和らぎます」と笑顔。普段は1人暮らしの井上雅子さん(78)は支援物資で菓子が届いたとき、中学生からあめ玉を手渡され「自分たちも大変なのに、優しさを分けてくれて涙が出た」と振り返る。

大人たちと一緒に「がんばるけん」

 熊本市では断水が続き、避難所の水不足も深刻だ。そこで16日には、運動場に「のみ水ください」と白線を引き、上空から見えるようにSOSを発信した。その画像が短文投稿サイト「ツイッター」で広がった。17日夜から、ペットボトルやタンクで飲料水が続々と届き始めたという。

 18日には自衛隊給水車も初めて到着した。避難所をまとめる江南地区の田上一成自治協議会長(79)は「当初の10倍に増えた。長期的な避難になればまだまだ足りないが、大変ありがたい」と感謝する。

 生徒たちもお礼の気持ちを伝えようと、運動場の白線を「のみ水ありがとう」と書き直し、避難生活を送る大人たちと一緒に「がんばるけん」と付け足した。

 「困っている人が心配」と自宅から毎日通う江南中3年の野崎シエラさん(14)は「地域でお世話になっている人ばかり。お互いに助け合いたい」と語り、お年寄りたちと笑顔で言葉を交わしていた。

=2016/04/19付 西日本新聞夕刊=

西日本新聞社