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なぜ女は急に不機嫌になるのか?「男女は絶対にわかり合えない」との認識が諍いを防ぐ!

「Thinkstock」より

「男は“股間”の都合を最優先に考えるから、理想の女を目指して自分磨きをするのは無駄」と言い放つ斬新な婚活本『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)が、2015年7月に発売された。


 男性も女性も、自分の都合で相手を解釈し、誤解し、イライラし、「わかってくれない」とふてくされる……。そんな不毛な人間関係は、恋愛や結婚に限らず、仕事上でも多く見られるのではないだろうか。

「性による考え方の違い」を理解することができれば、恋愛をはじめとした人間関係や仕事がグッと楽になる可能性がある。もっと楽に生きるための男女の「違い」について、同書著者の仁科友里氏に話を聞いた。

女性の自虐ネタに男性がドン引きするワケ


--男女の感じ方の違いが顕著に出るのが、「自虐」に対してではないかと思います。女性が自虐ネタを言うと、女性同士では盛り上がるのですが、男性は驚くほど引いてしまいます。

仁科友里氏(以下、仁科) 脳科学的には、「人からどう見えるか」という自意識は哺乳類のメスだけに備わっているそうです。相手からどう見えているかを考えることによって、自分と子供の安全を守っているのです。

『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社仁科友里

 女性の自虐は「どう見えるか」という自意識と、女性特有の格付け競争、女子カーストがからんでいます。カーストが低い自分に自信がないため、男性に強く肯定してほしいのでしょうが、男性には自意識がないので理解することができません。下手したら、自虐を真に受けられたりしてしまいます。

 

--男性にありがちな「俺はすごい」という意識は、自意識とは違うのでしょうか。

仁科 男性ホルモンの代表的な物質、テストステロンは性欲を促すそうですが、自慢話をしている時にもたくさん分泌されるそうです。つまり、「俺はすごい」というのは、自意識ではなく性欲に近いものといわれています。

--確かに、「他者にどう見られるか」という視点(自意識)がないからこそ、無邪気に「俺はすごい」と振る舞うことができるのかもしれませんね。中には「たいしたこともしていないのに、なんで、あんなに自信満々なんだろう」と思わざるを得ない男性もいますが、それはなぜなのでしょうか。

仁科 男性ホルモンのテストステロンは支配欲を高める働きがありますから、根拠のない自信が持てるのではないでしょうか。婚活でうまくいっていない男性の中にも、女性を悪く言う人がいますね。

--「うまくいっていないのなら、反省すればいいのに」と思いますが……。

 

仁科 成績や仕事の評価に、性別は関係ありません。しかし、結婚は一生1人とセックスする契約ということもあって、婚活では女性の年齢や外見という、努力ではどうにもならないことが重要になってきています。また、日本の社会や文化にはいまだに「外見や年齢で女性を差別していい」「女性は男性を立てるものだ」という価値観が残っており、婚活中の女性は男性の“下”を演じてしまう。なので、女性と比べて男性は婚活で傷つくことが少ないのです。

 こういった社会や文化の土壌のほか、男女共に異性に対するコミュニケーション方法がわかっていないため、食い違ってしまいます。女性は本心でなくても男性をほめつつ「自分をわかってほしい」と思い、男性は自分はほめてもらって当然と思う。女性が男性をほめてあげても、男性は女性の要求に応えない人が多いので、ストレスをためる女性が多くなるのです。

“ほめスキル”ですべてがうまくいく?


--その結果、すれ違いが続いているカップルや夫婦も多いでしょうね。

仁科 男性から見てわかりにくい女性の自意識をときほぐすには、ほめるのが一番ですが、女性のほめ方をわかっていない男性は多いです。私はヨーロッパに住んでいたことがあるのですが、現地では働かない既婚男性が珍しくなく、けれど女性も楽しそうでした。というのも、男性が家事や育児を積極的に行い、また、男性が女性をよくほめるのです。日本の婚活では、「イケメンかお金持ち」以外の男性が苦しくなりつつあるといわれますが、だからこそ“ほめるスキル”を持つこと大切だと思います。

--なぜ、男性は女性をあまりほめないのでしょうか。

仁科 そのような文化がなかったということと、男性が経済的に強者だった時代が長いので、女性も従うしかなかったのでしょう。けれど、現在は男性だからといって稼げる時代ではありません。女性にも経済力を求めるなら、家事や育児をやり、女性をほめるという行為は必要となってきます。

 女性は、子供のころから「男を立てろ」という空気を感じて大きくなっていますから、無意識に男性をほめることが身についています。これからは男性が積極的に女性をほめないとダメだと思います。

--男性は女性をほめることに慣れていない上、職場では「セクハラになってしまうかも」という心理が働くのかもしれませんね。

 

仁科 外見や特定の誰かをほめることはセクハラに該当しますから、やめたほうがいいです。例えば、その女性がやっている仕事に対して、一言かけるだけでいいのです。何かお願いした際に「時間のかかる仕事だけど、ごめんね」と言うだけでもいい。女性のやっていることに関心を持たない男性がとても多いと思います。関心がないのにほめられても、嘘くさいですよね。

男性はなぜハニートラップに引っかかるのか?


--関心を持ってもらえるだけでも、女性は力がみなぎるくらいうれしくなりますね。

仁科 男性がほめてほしいポイントである「学歴」「仕事」は、結果に関することですが、女性は「がんばってるね」など、プロセスをほめられるとうれしくなります。これも、男女間の大きな違いですね。

 女性が売れないミュージシャンを支えるのは、女性自身がそのプロセスを楽しんでいるから。しかし、男性は成功したら糟糠の妻をあっさり捨てる……。それは、男性にとってプロセスはそんなに大事ではないからです。

 男性は「見て、すぐにわかるもの」が好きなのです。例えば、ハニートラップは冷静に考えればすぐに罠とわかるのに「かわいい」「若い」といった性的メリットを前にすると、自分に都合のいい解釈をしてしまう。

 一方、女性は一見してわからないものを見つけてほしいし、見つけるのは男性の仕事だと思っています。女性が占いを好きなのも、「自分のわからない自分を見つけて、教えてほしい」という思いからです。そして、「見つけてくれない男性は、いい男ではない」とみなします。

--「(自分すら知らない)私の良さを見つけるのが、男の仕事でしょ」というのも、ちょっと図々しい発想のような気がします。

仁科 「ある日突然、素敵な王子様が現れる」という少女漫画の刷り込みと、SNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)の影響が大きいと思います。SNSは「他人からどう見えるか」という自意識を意図的にコントロールできるがゆえに、女性を自意識過剰にします。しかし、先ほどお話ししたとおり、男性は女性の自意識がまるで理解できない。となると、女性は「あの男は見る目がない」「本当の私をわかってくれる人がいるはず」というふうに考えてしまうのです。

 


--ほかに、男女間で「考え方にずれがあり、トラブルの原因になっている」というポイントはあるのでしょうか。

 

仁科 女性は、結婚したいのに「まだ結婚する気はないんでしょ?」という聞き方をするなど、思っていることと反対のことを言って男性を試しがちなところがあります。しかし、男性はそれを額面どおりに受け取ってしまうため、気持ちのすれ違いが生じます。

--女性とすれば、「私の“真の気持ち”を察して」ということなのでしょうね。

仁科 男性の脳は察するようにできていないそうなので、女性の複雑な心を理解することはできません。なので、婚活中の女性には、短くわかりやすく話すことを勧めています。

 男性の脳が共感するようにできていないのは、生存競争に勝つためだそうです。察する能力があったら、狩りや縄張り競争には勝てないのでしょう。わかりやすく発情したメスにひかれるのも、繁殖のチャンスを逃さないため。それに対し、女性の察する能力は、子供を安全に育てるためです。

--太古から、男女の感覚のずれが生じているのだとしたら、現代において「なんでわかってくれないの」「どうせ男(女)なんて」と嘆くのも不毛ですね。

仁科 男女平等が進んでいるのはいいことですが、絶対的に男女間で違う部分やわかり合えない感覚もあります。それを知ることで、恋愛や結婚だけでなく、仕事がうまくいくことにもつながると思います。
(構成=石徹白未亜/ライター)