Real ~KoKoRo

心を刺激するテーマ。

【性暴力の実相】「下着が丸見えだったよ」セクハラ被害“組織”相手、募る疲弊 職失う不安、無視…

北部九州にある病院の職員だった20代のシホさん=仮名=は昨年、勤務先に何度もセクハラ被害を訴えた。その声は、組織の中でかき消されたという。「だれも聞いてくれなかった」。悔し涙がこみ上げる。

【性暴力の実相・セクハラ】「股間当てゲーム」「大根足ゲーム」会社の宴会での“余興”に参加させられ…

 相手は院長だった。あいさつする程度だったのに、携帯に電話をかけてきて「おまえとは相性がいい」と食事に誘ってきた。職員を怒鳴り散らすワンマン。断るのが怖くて1日に何度も鳴る携帯に触れなくなった。相談した上司は「セクハラは勘違いじゃないの?」。取り合ってくれず、仕事に行けなくなって退職した。

 離職票の理由をめぐり、セクハラを認めるよう求めると、再び組織に拒まれた。「院長は(シホさんから)男を紹介してと頼まれたので電話したと言っている」「セクハラを立証できる物はあるのか」

 実はシホさんは、同じような電話に悩まされたと、同僚から打ち明けられたことがあった。「食事に付き合うとホテルに誘われ、断ると現金を渡された」。セクハラは一部の職員には認識されていたという。

 職を失うのが怖くて声を上げられず、言い出せば組織として無視する。そんな構図がまかり通っていると思う。シホさんは心因性の発疹が全身にでき、婦人科系の病気も発症した。

販売店や上司に慰謝料を求めて提訴

 セクハラを認めない会社を相手に裁判になるケースもある。

 高級車の販売店で派遣社員として働いていた20代のマキさん=仮名=は歓迎会でカラオケを歌っていたとき、酔った上司に太ももあたりを持って抱き上げられた。スカートがずり上がり、席に戻ると同僚にこう言われたという。「下着が丸見えだったよ」

 この店で接客技術を磨き、航空会社の客室乗務員になる夢があった。飲み会で手を握られても笑って受け流せた。「抱えられただけなら我慢できたかもしれない」。みんなに下着を見られたと思うと糸が切れた。

 吐き気や頭痛が止まらず、仕事に行けなくなった。弁護士を通して会社と話し合いを持ったが、セクハラに関して意見は合わず、販売店や上司に慰謝料を求めて提訴した。